ストーカーになった父 〜連れ去られた弟〜
前回の投稿に「わたしが二十歳の頃に家を出た」で終わっているけれど、実は母とわたしと弟で、わたしが小学校1年生の時、4つ年下の弟が3歳の頃に母と3人で家を出た事がある。
母もさすがにこんな男と暮らす事に嫌気が差したんだろう。
幼い子ども二人を連れてある下宿屋に身を寄せた。
その“下宿屋”とは母の弟、すなわちわたしから見たらおじの知り合いの下宿屋だった。
広い長屋の一軒家で当時そこには50代くらいの大家夫婦とその息子が住んでいて、下宿人が3人いた。
3人の下宿人の一人は男性で当時大学生で、もう二人の下宿人は女子高校生だった。
わたしから見たら下宿人の3人も大人に見えた。
そこへ身を寄せる事になり、わたしは幼いながらも
(これで母が父親の事で悲しまなくなる)
と嬉しく思った。
母は夜のお店で、たぶんホステスの仕事を始めたと思う。
わたしは近くの小学校へ転入した。
元々人見知りなどしない性質のわたしはすぐにクラスにも馴染んでいったような気がするし、新しい環境にわくわくする気持ちもあった。何よりも母が父の事で悲しまなくなる、という思いがとても大きかった。
*****
転入して少し経った頃のある下校途中、わたしは名前を呼ばれた。
呼ばれた方を見ると父が弟と一緒に車の前でわたしの名前を呼んでいた。
わたしは異変と恐怖を感じた。
父は
「一緒に行こう」
とわたしを誘ったがわたしは
「行かない」
と言ってその場から立ち去った。
一緒にいたクラスメイトは
「お父さん?いいの??」
と言ったけど
「いいの!」
とわたしは胸騒ぎのする気持ちと共に走って帰宅した。
今思えば、幼い弟を目の前にして薄情な姉である。
でも、この状況に異変を感じたし、なぜここに父がいる?という恐怖みたいな気持ちもあった。
その日、夜遅く母は出かけて一晩帰って来なかった。
わたしは下宿屋のおばちゃん達と夕ごはんを済ませたものの、なんとなく寂しくて下宿人の大学生のお兄さんに遊んでもらった記憶がある。
その後一人で寝たんだっけかな?
覚えていない。